頭頸部外科
唾液腺がん
- 1)解剖学的部位
- 唾液腺としては、大唾液腺に分類される、耳下腺、顎下腺、舌下腺と小唾液腺とがある。小唾液腺は、ありとあらゆる粘膜上皮内に存在する。 唾液腺の大きさは、耳下腺>顎下腺>小唾液腺の順である。
- 2)疫学
- 唾液腺腫瘍は、高齢者にも若年者にも発生する。また、良性と思われていた唾液腺腫瘍が、長年の間に悪性変化を来すことも知られている。唾液腺は腫瘍の好発部位であり、良性腫瘍と悪性腫瘍とが多数発生する。唾液腺に発生した悪性腫瘍を考える場合に、原発部位の違いにより悪性の発症率が異なる。小唾液腺>舌下腺>顎下腺>耳下腺の順に、発生した腫瘍が悪性である確率が高いと考えられている。
唾液腺腫瘍の大きな特徴は、病理組織が多彩であることである。腺系の腫瘍が多いが扁平上皮癌も発生する。腺系由来の腫瘍も、悪性度の高いものから、癌と診断がついても10年単位でゆっくり経過するものもある。
- 3)症状
- 多くは隆起性病変として自覚される。腺様嚢胞癌では神経親和性が高く、早期から疼痛を訴える場合がある。耳下腺に発生した場合には、進行すると顔面神経麻痺や頚部リンパ節転移を引き起こす。
- 4)診断
- 唾液腺腫瘍では、的確な診断を付けることが大切である。針細胞診等は許容範囲であるが、生検は禁忌と判断される。悪性腫瘍の場合でもある大きさまではカプセルに包まれており、そのカプセルを破ることは癌の散布を引き起こすばかりでなく、手術時に顔面神経周囲に不必要な癒着を引き起こし、手術時に顔面神経の損傷を起こしかねないからである。触診と細胞診が最重要で、CTを加えることにより、術前に最大限の情報を引き出す事が重要である。唾液線シンチグラムは必ずしも必要としない。
- 5)治療
- 耳下腺腫瘍では、顔面神経の温存を全例で試みるべきであり、そして、もし神経に浸潤している場合には、神経再建を可能な限り行う。術式は基本的に、浅葉切除が行われる。顔面神経だけを温存し耳下腺を全摘することも技術的には不可能ではないが、その場合には全顔面神経を挙上剥離せざるを得ず、顔面神経の不全麻痺を引き起こす場合も少なくない。顔面神経麻痺を治療開始前から伴った、扁平上皮癌や未分化がんでは、顔面神経を耳下腺と一体化し耳下腺を全摘するが、腺系由来の悪性腫瘍の場合には必ずしも耳下腺の全摘は必要ないと考えている。耳下腺が顔面神経と一緒に全摘される場合にも、可能な限り、顔面神経本幹と、顔面神の末梢枝と間で神経移植を行い、整容的な回復を試みるべきであり、開眼閉眼が将来行えるように配慮する事も重要である。進行度によっては、放射線治療を追加する場合がある。進行癌では、下顎骨頸部を合併切除する場合もある。状況に応じて、遊離移植骨弁による下顎骨の再建を行う。
顎下腺腫瘍では、可能な限り顔面神経の下顎縁枝を温存し、整容的に口唇の左右のバランスを保つように心掛ける。進行癌では、下顎骨を合併切除せざるを得ない場合もあり、その場合は、遊離移植骨弁で化学骨の再建を行う。