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各論

口腔がん
  1. 解剖学的部位
     口腔領域は、胃や肺などの臓器と異なり、解剖学的な総称を意味します。従って、口腔発生する悪性腫瘍は、解剖学的発生部位別に、舌、口腔底、頬粘膜(含 口唇粘膜)、硬口蓋、歯肉(上下)、の5領域に分けられ、この領域に発生した癌はそれぞれ、舌がん、口腔底がん、頬粘膜がん、硬口蓋がん、歯肉がん、と呼ばれます。
     舌とは、開口時にほぼ見える範囲の舌の領域を指します。医学的には舌乳頭よりも前方部分です。舌乳頭に連続して下方に延長して存在する領域は舌根(中咽頭前壁)と称され、口腔領域とは別途に取り扱われます。口腔内の上壁の前方部分は上顎骨の下壁に接した粘膜部分で、硬口蓋と呼ばれます。上壁の後方部分は骨が欠落し軟部組織の柔らかい部分からなり、軟口蓋(中咽頭上壁)と呼ばれ、口腔領域とは別途に取り扱われます。下顎骨や上顎骨の歯槽部分を覆っている薄い粘膜部分は歯肉と呼ばれます。下顎骨の歯肉の部分と舌下面との間の軟部組織は口腔底と呼ばれます。頬粘膜は口腔内の頬の内側の粘膜や口唇の内側の粘膜を指します。
  2. 疫学
     口腔癌の発生は、喫煙や飲酒などの慢性刺激、口腔内の不衛生、内反・外反あるいは損傷した歯や義歯等による粘膜への過度の刺激、等が発癌の原因となる場合が臨床的に多く認められます。これらの悪循環が継続される場合には、学童の若年者にも発生する場合があります。噛みたばや噛み玩具の継続使用により絶えず口腔粘膜を噛んだり、口腔粘膜に過剰の非生理的刺激を与えることには注意を要します。
     口腔領域は解剖学的には5領域に分けられますが、喫煙や飲酒など、環境的には同一環境下に暴露されている場合も多く、同時的あるいは経時的に同一口腔内に癌細胞が多発することがあります。
  3. 症状
     解剖学的発生部位により症状が若干異なりますが、病巣部分がある大きさ以上になりますとほぼ同一的な症状を示します。初期の段階では、粘膜表面の色調の変化(白斑、あるいは紅斑)、や患部の滲みる感じが生じ、さらに増大すると、硬結や潰瘍形成、圧痛が発生いたします。さらに進行すると頸部リンパ節転移が発生してきます。舌がん以外では患側(同側)の頚部リンパ節転移が大多数ですが、舌癌では、患側以外にも健側(対側)の頚部リンパ節転移が発生することがあります。
     口腔領域は自分の指で病巣部分を触れることが出来ますから、自分で早期発見が出来る部位です。硬結や圧痛、色調の変化、等が自覚された場合には耳鼻咽喉科医を受診することを薦めます。
  4. 診断
     視診、触診、画像(CT、,MRI、,超音波、等)診断、および組織検査により診断を行います。診断のポイントは腫瘍の大きさと頚部リンパ節転移の有無の評価です。病巣全体が触診により十分に把握できる場合には必ずしも、原発の評価二歳氏、CTやMRI検査は必要ではありません。ただし、頸椎高位のリビエールリンパ節転移の評価や頚部リンパ節転移の評価のためにはこれらの画像検査が役立ちます。
  5. 治療
    がんの発生部位や進行度、発症年齢により若干異なってきます。

i)初期癌(I期、II期以下)の場合

 手術療法、あるいは放射線の単独療法で多くの場合には、根治治療に結びつきます。広範囲の白斑部位を伴う、硬口蓋癌や頬粘膜癌あるいは歯肉癌では放射線治療やCO2レーザー蒸散術あるいは両者の併用療法が行われます。限局した硬結を有する場合には手術的治療が選択される場合が多くなっております。
 それぞれの治療には一長一短があり、絶対的なものではありません。例えば、手術単独治療では、治療入院期間は一週間前後でとなります。一方放射線治療では少なくとも5週間から6週間以上の放射線治療期間を要し、放射線治療終了後も炎症が消退するまで一定の期間を要します。歌手やアナウンサーなどのように、声を商売にしている場合には、手術的切除を行うよりも組織内照射(小線源治療)による放射線で焼灼する方が舌の機能障害が少なくてすみます。初期癌の場合には手術療法でも切除範囲がそれほど大きくないため、術後に機能障害をほとんど感じること無くに経過している場合が多く、近年は放射線治療よりも手術療法が多く選択されています。
また、手術療法が選択される理由として以下の理由も挙げられます。癌治療では再発する場合や第2の癌の発生する場合が多く、一度放射線治療を施行すると同じ領域に再び放射線治療が施行できなくなってしまうため、次の治療に備えて、放射線治療を温存しておくという考えです。また、若年者の場合には放射線誘発癌が将来発生するリスクがあり、放射線治療が避けれる場合には避けておくという考え方です。

ii)進行癌(III期、IV期)の場合

 手術療法単独、もしくは手術療法+放射線療法の二者併用療法、もしくは手術療法+放射線療法+化学療法の三者併用療法が選択されます。
 口腔内は、気道でありかつ食道(食物の通り道)でもあり、しかも、構音・構語・咀嚼・嚥下、等、様々な機能を有します。従って口腔内の解剖学的構造物がある程度取り除かれる進行癌の手術では、当然のこととして、これらの機能が劣化することとなります。命と引き替えに手術を受けられるのですから、患者自身もある程度病状の理解が必要となります。特に舌がんや口腔底がんの癌進行癌の治療で、隣接する中咽頭領域までもが口腔領域と同時に広範囲に切除される場合には、気道と食道との交通整理がつかなくなり、音声を犠牲(喉頭摘出)にして経口摂取を優先せざるを得ない場合があります。
 また、進行癌の治療では、手術により病巣の拡がり状態が明らかになる場合も少なくありません。切除断端面の癌細胞の有無や頚部リンパ節転移の個数や状態により放射線治療や抗癌剤の併用も行われます。さらに切除後の機能劣化を僅少かする目的で、遊離あるいは有茎の移植皮弁により、再建が行われます。
 進行癌でも、癌細胞に直結している動脈に直接抗癌剤を注入する超選択的動脈注入療法と放射線治療を併用することにより、癌の制御が出来る場合があります。手術非希望者や全身状態が不良で手術が不可能な症例に適応となります。

 進行癌に限らず初期癌であったとしても、癌治療で必ずしも癌が根治できるとは限りません。局所再発や遠隔転移で根治性が望めなくなる場合も少なくありません。そのような場合に、現在は少量の抗癌剤を長期間渡り服用することにより延命の効果を求める治療が趨勢になっております。緩和治療との兼ね合いが課題となります。

咽頭(上咽頭、中咽頭、下咽頭)がん

 咽頭は口腔と同じく、臓器ではなく管腔に対する人為的な名称である。胃とか肺とかの臓器とは全く異なる概念である。咽頭に含まれる臓器としては、中咽頭に属する口蓋扁桃ぐらいである。咽頭は、臨床上、上・中・下の三つの部位に分けられる。分類されるにはされるだけの理由があるわけで、三者ともそれぞれ特有の形態や、そこの発生した病態によりそれぞれ特有の症状を呈し、かつ治療方法も異なるからである。
 咽頭は空気や食物の経路であり、人間の生理機構を理解すると解剖学的関係がわかりやすい。鼻呼吸を前提にすると、鼻腔→中咽頭→喉頭→気管→肺の順に空気が流入し、酸素が取り入れられる。一方食塊は、経口摂取を前提にすると、口唇→口腔→中咽頭→下咽頭→食道→胃の順に進む。この経路で気がつかれたと思うが、中咽頭は気道と食物の道通り道=“広義の食道”を兼ね備えた部位である。解りやすく例えるならば、中咽頭はズボンの臀部に相当し、左右の両足に相当するのが、喉頭と下咽頭である。
 従ってこれらの部位に発生した悪性腫瘍の症状や治療を考える場合に、気道を中心にする症状であるか、“広義の食道”を中心とする症状であるか、気道と“広義の食道”の症状が混在したものであるかがある程度理解できると思う。

A)上咽頭がん

  1. 解剖学的部位
     一般には鼻の奥と突き当たりと考えて良い。口腔の突き当たりの上方部分であり、鼻呼吸の経路である。耳管の開口部であり、中耳と連結している部位でもある。上方は頭蓋底つながっており、12本存在する脳神経の経路とも近接した一に相当する。従って、底に占拠性の悪性腫瘍が発生すると、耳症状や脳神経症状が発現しやすくなる。
  2. 疫学
     上咽頭がんは、以前は中国人に多いといわれ、高濃度の喫煙や香と関係があると言われてきた。またEBウイルスも発症に関わりがあると言われている。以前は発祥に地域性があると言われていたが、近年は広く発生し、日本人にも多く発症している。高齢者にも若年者にも発症する。なお、上咽頭は、頸部、および中咽頭に次いで悪性リンパ腫の好発部位でもある。
  3. 症状
     初期の段階では、易出血性以外は無症状であるが、耳管開口部に影響が生じると、滲出性中耳炎を引き起こし聴力の低下を訴える。この時点で耳鼻咽喉科を受診する場合が多いが、一側性の聴力低下は自覚症状がもてない場合も多く、さらに進行して、頸部リンパ節転移による頸部腫瘤や脳神経症状(外転神経麻痺による複視)を主訴に受診する場合も少なくない。
     上咽頭がんの特徴の一つとして遠隔転移が多いことが挙げられる。骨転移や肺転移である。他の領域に発生した扁平上皮癌の場合には、遠隔転移が発生した場合には、予後が不良であるのに対して、上咽頭がんでは加療を重ねることにより、遠隔転移が発症しても、すぐに生命予後に影響しない場合も少なくない。
  4. 診断
    発生する腫瘍の病理組織像は扁平上皮癌が主体であるが、他の領域が分化型の扁平上皮癌が多いのに対して、上咽頭では低分化型の扁平上皮癌が多いのが特徴である。分化度が非常に悪くいわゆる未分化癌を呈する場合も多い。
    ファイバースコープの視診と生検で容易に診断が可能である。
  5. 治療
    放射線と化学療法を主体とする治療である。手術を追加する場合は、諸々の治療後に頸部リンパ節転移が消退しない場合にのみ行われることが多い。近年頭蓋底外科普及し、脳実質に浸潤していない場合には、手術の適応と判断される場合もある。

B)中咽頭がん

  1. 解剖学的部位
     一般の方には一番理解されにくい部位と思われる。開講すると舌が見えるが、舌は口腔の奥で下方に曲がる。この下方に降りた口腔からは見えない領域が舌根と言われ、中咽頭の前壁を構成している部分であり、中咽頭の前壁と呼ばれる。側壁は左右の扁桃腺の部位が中心となる。上壁は軟口蓋である。そして、後壁は口腔の突き当たりに相当する。壁ボブ分です。中咽頭はこのように四つ部位から構成されております。
     中咽頭を理解する上で重要なことは、中咽頭は、気道と食物の通り道でもある“広義の食道”、とを兼ね備え、かつ、下方には気道の続きとして、喉頭が存在し、“広義の食道”の続きとして下咽頭と連結していることである。口に含んだものが、“これが空気だ”、“これが食べ物だ”、人間は意識しないで嚥下できるのは、中咽頭で、気道と“食物の通り道”との交通整理がなされているからである。この分離機能には取り分け、中咽頭の前壁である“舌根”と側壁が深く関わっている。
  2. 疫学
     一般に、下咽頭がんと同様に飲酒量の多い方に発症し、高分化型の扁平上皮癌が多いが、低分化型の扁平上皮癌も発症し、その場合は、必ずしも飲酒とは関係なく発症する場合がある。悪性リンパ腫の好発部位でもあります。
  3. 症状
     発症した解剖学的部位により、症状は異なる。上壁や側壁の場合は、易出血症性や隆起性病変、あるいは疼痛や滲みる感じ、違和感を主訴に耳鼻咽喉科を受診する場合が多い。後壁や前壁は自分で見えにくい部位や観察が出来ない部位のため、進行した状態で受診される場合も少なくない。受診の動機は、痰に血が混じる、あるいは声が籠もる(hot potato speech)、あるいは頸部腫瘤、等である。頭頸部癌の臨床で、頸部リンパ節転移が先行するがその転移を引き起こした原発部位が判明しないため、“原発不明頚部癌”の診断名が付けられる場合があるが、その場合に原発が中咽頭であることが多いと言われている。
    初期癌を見つけるのが難しい部位である。進行すると、側壁に発症した場合には開口障害が生じ、前壁に発症した場合には、誤嚥等が生じる。
  4. 診断
     触診と硬結部分の組織診断が最重要である。言っての大きさになると画像(CTやMRI))で占拠性部位を推察できるが、初期の段階では、生検する部位の選定には、取り分け前壁(舌根)の精査にはファイバースコープは不可欠である。
  5. 治療
     頸部リンパ節転移がなく、病巣が局所に留まっている場合には、放射線治療が第一選択となる。化学療法との併用が効果的である。舌根の場合には、抗癌剤の超選択的動脈注入法により奏功する場合も少なくない。頸部リンパ節転移が生じても、原発が制御できれば、頸部廓清術を追加することにより、ほぼこれまでと同様の生活を継続することは可能である。
     中咽頭がんの観血的治療で一番問題となるのは、術後に問題なく(誤嚥することなく)経口摂取が可能であるか否かである。上壁や側壁に原発した場合には、喉頭の温存出来る場合が多いが、後壁や前壁に発症した場合には、同時性、異時性を含めて、手術摘出後に安全に経口摂取する目的から、失声する可能性があることを理解する必要がある。人間は、誤嚥が連続して経口摂取しながら生きてゆけないのである。病院を離脱し、自分で経口的に栄養をるためには、誤嚥は許されないのである。失声については、喉頭癌の項目でも言及するが、音声は獲得することがある程度可能であり、安全に一定時間内に経口摂取出来ることが重視されるからである。

C)下咽頭がん

  1. 解剖学的部位
     喉頭の後方に位置し、食物の通過経路である。一般の方は“食道との違いは何であろうか?”、と思われるかもしれないが、両者の鑑別は、専門家でないと理解されにくいところである。
     食物の経路を考える場合に、人間の意志の力が働く場所はごく限られた部位だけなのです。口腔に取り入れた食塊を嚥下するときと排便するときの二カ所だけです。それ以外は、重力や蠕動で体内を通過するである。すなわち、下咽頭は自分の意志が働く下限界なのです。意志の力で、口腔・中咽頭の各組織と協調運動により、食塊を力強く食道に送り込んでいるのである。
     従って、下咽頭と食道とは解剖学的構造が全く異なるのである。下咽頭粘膜を動かしているのは、随意筋の骨格筋である輪状咽頭筋で、食道を形成しているのは、不随意の平滑筋である縦走筋である。“ゴクン!”と飲み込むことにより、輪状筋が収縮し、食道に食塊はが送られるのである。食道に入った食塊は重力で落下していく。輪状咽頭筋は、通常の状態でも収縮しおり、そのため、“げっぷ”をしても、頸部食道まで食物の逆流を認めても、口腔内にはめったに排出されないのである。もし、下咽頭収縮筋がなかったならば、すなわち、食道と同じ構造ならば、人間は逆立ちした場合に、噴門がゆるむと食物が直ちに口腔内に出てしまうことになる。輪状咽頭筋と縦走筋は、解剖学的構造が異なる。前者は血管野リンパ管が豊富であるのに対して、後者は比較的疎である。
    下咽頭は、約束事により、三つの部位に分類される。梨状窩、後輪状部、および後壁である。
  2. 疫学
     下咽頭がんの発症は、比較的はっきりしている。第一には飲酒愛好家である。梨状窩や後壁原発の場合は、ほとんど強飲酒愛好家である。非飲酒家でも癌が発生する。その場合に、ほとんどの症例が貧血を長年患っている症例である。鉄欠乏性・低色素性・低球性貧血である。プランマー・ビンソン症候群とも関係があるといわれている。貧血に関係する下咽頭がんは発症部位に特徴があり、女性に多く、ほとんどが後輪状部原発である。
  3. 症状
     発症部位により多少異なるが、血痰や咽頭異和感、あるいは嚥下痛(耳性放散痛)を主訴に受診する。頚部リンパ節転移が多いのも特徴である。梨状窩原発の場合には、この梨状窩が左右にあるため、食物の通過障害は進行しないと発症しない。後輪状部原発では早期から食物の通過障害が生じる。後壁原発では、嚥下時に喉頭に唾液や食塊が流入しやすく、誤嚥や増大した痰を訴える場合が多い。喉頭に隣接しているため、進行すると反回神経麻痺による嗄声が生じる。よほど進行しないと気道狭窄は出現しない。環境発生にため、食道がんや胃がんの同時性あるいは異時性の重複癌が多いのも特徴である。
  4. 診断
     ファイバースコープによる腫瘍の観察と組織検査で診断が可能である。唾液が駐留し下咽頭の観察が難しくなるが、吸引器付きファイバーで診察が可能となる。
  5. 治療
     下咽頭がんは頚部リンパ節転移や遠隔転移が多く、頭頸部癌のうちでは予後不良の癌の一つであり、積極的な治療を重ねることが必要である。声帯運動の固定限が認められ、頸部リンパ節転移が生じている場合には、喉頭を合併切除する咽喉摘出術および両側頸部郭清術が行われる。必要に応じて術後に放射線治療や抗癌剤の投与も行う。咽喉摘出の場合には、食物の経路が消失するため頸部食道の再建が必要となる。遊離空腸移植や筋皮弁による再建術が広く行われている。
     初期の場合には、原発が放射線治療で制御可能な場合がある。下咽頭がんは、早期発見・早期治療が比較的難しい部位である。加療には音声温存の有無との絡みもあり、患者自身が病状や治療方法を十分に理解される必要がある。
喉頭がん
  1. 解剖学的部位
     いわゆる“のどぼとけ”に相当する部位である。喉頭は医学的には3領域(声門上、声門、声門下)に分けられる。声帯が存在する部位は声門であり、音声と直結する。喉頭はまた、気管や肺に繋が部位でもあり、中咽頭からの食塊の流入にさいし、防御作用を追うするため、他領域よりも知覚が過敏であり、反射が強い部位である。
  2. 疫学
     喫煙と喉頭癌との関係は知られているが、飲酒とも関係が深い。3分類のうち嗄声と関係が深いのは、声門にある声帯に病変が生じた場合である。喉頭に発生する悪性腫瘍は、声門>製網上>声門下の順位多く、近年は喉頭癌の約7割が声門癌といわれている。声門下癌が一番少なく数%以下である。喉頭がんは嗄声だけが症状ではなく、部位により発症症状が異なることを銘記すべきである。
  3. 症状
     声門癌では、嗄声が癌の発症の早期から生じるため、早期発見が可能である。2週間以上嗄声が改善しない場合には、耳鼻咽喉科を受診することを勧める。声門上がんは症状の発現が遅く、咽喉頭の異常感や嚥下痛、血痰、あるいは頚部リンパ節転移による頸部腫瘤で発見される場合が多い。声門下がんはほとんど無症状で、進行すると呼吸苦や嗄声で見つかることが多い。声門上がんは、リンパ節転移が多く、発症部位によっては下咽頭がんとの境界型を示し、下咽頭がんにすべきか、喉頭癌にすべきか判断に迷う場合もある。
  4. 診断
     ファイバースコープによる腫瘍の存在と病理組織検査で確定診に至る。甲状軟骨への破壊の有無等により病期評価に対してはCTがよくわかる。
  5. 治療
     病期Ⅰ、病期Ⅱ以下に対しては原則として、放射線治療や部分切除、あるいはレーザー蒸散術や放射線との組み合わせが行われる。Ⅲ期以上では、手術もしくは放射線加療が選択されるが、発症部位や症状によりその対応が様々である。前方部分の喉頭軟骨や輪状軟骨に浸潤し潰瘍を形成するタイプでは放射線治療が奏功しにくく手術が選択される場合が多い。症例によっては、進行がんでも喉頭の部分切除の適応もあるが、肺活量や年齢、発症部位など、選択を慎重にする必要がある。
     手術で喉頭が摘出されると、失声し、永久気管孔が形成されるため、手術前に患者は病状を十分に把握する必要がある。失声が生じた場合でも、練習により食道発声や電気喉頭(エレクトロラリンクス)で会話を行うことが可能になる場合が多い。ちなみに喉頭が摘出されると第3級の障害者に該当する。
鼻のがん
  1. 解剖学的部位
     鼻腔、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞を総称して鼻と称する。鼻腔内の外側にはには上・中・下の3種類の鼻甲介が存在し、内側には鼻中隔が存在する。大多数の粘膜は多列もしくは立法繊毛上皮から成り立っているが、下鼻甲介の前方部や鼻前庭では扁平上皮から成り立ている。顔面のほぼ中心部分に前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞が存在し、外側の頬部に上顎洞が存在する。
  2. 疫学
     上顎洞癌は、鼻に発生する悪性腫瘍のうち一番頻度が高く、上顎洞癌の発生には慢性副鼻腔炎のとの間に相関があると考えられていたが現在は否定的である。近年は減少傾向にあるが、日本人に多く、臨床的にしばしば遭遇する疾患の一つである。進行すると眼球突出が生じ、四谷怪談の“お岩さん”は上顎洞癌と言われている。
  3. 症状
     鼻は空洞を有する部位のため、空洞内に腫瘍芽留まっている場合には症状の発現が少ない。鼻腔や自然孔に発生すると鼻出血や鼻閉等が生じ、比較的早期に腫瘍の存在に気がつくことがある。また、歯根部近傍に腫瘍が発生する場合には、歯痛の精査で腫瘍が確認される場合もある。進行し、腫瘍が空洞を形成している上顎骨を破壊すると隆起性病変として診断がより容易になる。例えば硬口蓋の隆起や顔面頬部の腫脹である。臨床的にはこの状態になってから専門病院を受診する場合が圧倒的に多いのが現状である。
     上顎洞癌は、腫瘍の発育する方向により、臨床症状が異なる特徴がある、上方に発育すると眼球突出が認められる。下方では歯痛や硬口蓋の隆起であり、後方に発育すると開口障害が生じる。
     鼻の癌では、原発部位の違いにより、頚部リンパ節転移の発症頻度が異なると考えられている。上顎洞癌では、頸部リンパ節転移が発症しにくく、生じたとしても顎下三角部に留まって場合が多い。病理組織像は、多く分化型扁平上皮癌である。一方篩骨洞や蝶形骨洞に発症した場合には内頚静脈に沿って、頸部全域に頚部リンパ節転移が発症する場合が多い。病理組織像も、低分化方扁平上皮癌や未分化癌も多い。篩骨洞がんや蝶形骨洞がんは、遠隔転移も多く、上顎洞癌に比べて予後不良と考えられている。
  4. 診断
     生検による組織検査と、CTによる腫瘍の存在部位で病期が決まる。
  5. 治療
     治療の原則は、放射線治療、化学療法、手術の3者併用療法を原始口する。特に超選択的動注による抗癌剤の散布と放射線療法の併用は、基本的治療法となっている。放射線と抗癌剤の治療終了後仕上げの手術が行われる場合が多い。
唾液腺がん
  1. 解剖学的部位
     唾液腺としては、大唾液腺に分類される、耳下腺、顎下腺、舌下腺と小唾液腺とがある。小唾液腺は、ありとあらゆる粘膜上皮内に存在する。 唾液腺の大きさは、耳下腺>顎下腺>小唾液腺の順である。
  2. 疫学
     唾液腺腫瘍は、高齢者にも若年者にも発生する。また、良性と思われていた唾液腺腫瘍が、長年の間に悪性変化を来すことも知られている。唾液腺は腫瘍の好発部位であり、良性腫瘍と悪性腫瘍とが多数発生する。唾液腺に発生した悪性腫瘍を考える場合に、原発部位の違いにより悪性の発症率が異なる。小唾液腺>舌下腺>顎下腺>耳下腺の順に、発生した腫瘍が悪性である確率が高いと考えられている。
     唾液腺腫瘍の大きな特徴は、病理組織が多彩であることである。腺系の腫瘍が多いが扁平上皮癌も発生する。腺系由来の腫瘍も、悪性度の高いものから、癌と診断がついても10年単位でゆっくり経過するものもある。
  3. 症状
     多くは隆起性病変として自覚される。腺様嚢胞癌では神経親和性が高く、早期から疼痛を訴える場合がある。耳下腺に発生した場合には、進行すると顔面神経麻痺や頚部リンパ節転移を引き起こす。
  4. 診断
     唾液腺腫瘍では、的確な診断を付けることが大切である。針細胞診等は許容範囲であるが、生検は禁忌と判断される。悪性腫瘍の場合でもある大きさまではカプセルに包まれており、そのカプセルを破ることは癌の散布を引き起こすばかりでなく、手術時に顔面神経周囲に不必要な癒着を引き起こし、手術時に顔面神経の損傷を起こしかねないからである。触診と細胞診が最重要で、CTを加えることにより、術前に最大限の情報を引き出す事が重要である。唾液線シンチグラムは必ずしも必要としない。
  5. 治療
     耳下腺腫瘍では、顔面神経の温存を全例で試みるべきであり、そして、もし神経に浸潤している場合には、神経再建を可能な限り行う。術式は基本的に、浅葉切除が行われる。顔面神経だけを温存し耳下腺を全摘することも技術的には不可能ではないが、その場合には全顔面神経を挙上剥離せざるを得ず、顔面神経の不全麻痺を引き起こす場合も少なくない。顔面神経麻痺を治療開始前から伴った、扁平上皮癌や未分化がんでは、顔面神経を耳下腺と一体化し耳下腺を全摘するが、腺系由来の悪性腫瘍の場合には必ずしも耳下腺の全摘は必要ないと考えている。耳下腺が顔面神経と一緒に全摘される場合にも、可能な限り、顔面神経本幹と、顔面神の末梢枝と間で神経移植を行い、整容的な回復を試みるべきであり、開眼閉眼が将来行えるように配慮する事も重要である。進行度によっては、放射線治療を追加する場合がある。進行癌では、下顎骨頸部を合併切除する場合もある。状況に応じて、遊離移植骨弁による下顎骨の再建を行う。
     顎下腺腫瘍では、可能な限り顔面神経の下顎縁枝を温存し、整容的に口唇の左右のバランスを保つように心掛ける。進行癌では、下顎骨を合併切除せざるを得ない場合もあり、その場合は、遊離移植骨弁で化学骨の再建を行う。
甲状腺がん
  1. はじめに
     甲状腺疾患は、一般の方にも知名度も高く、日常診療においてもしばしば耳にする機会の多い疾患である。しかしながら、そこに発症した疾患を画一的に分類し対処することは、簡単のようでいて、難しいのである。それは、甲状腺が、小さい臓器にも拘わらず、内分泌臓器であり、悪性・良性を含めた新生物も多く発生しすると同時に、炎症や、過形成を伴う腫瘤性病変も発生するからである。そして、その大半は、経過がゆっくりな症例が多い。
     本ホームページでは、当施設において遭遇する機会の多い、甲状腺結節性疾患(甲状腺腫瘍、腺腫様甲状腺腫、過形成、等)の当科における対処方法を提示する。
  2. 新生物

    A)悪性新生物

    1. 甲状腺悪性腫瘍の種類
       甲状腺に発生する悪性腫瘍は、頻度の高い順に、乳頭癌(90%)>濾胞癌(4~8%)>悪性リンパ腫(2~3%)、未分化癌(1~2%)、髄様癌(1~2%)、扁平上皮癌(1%以下)である。経時的変化で乳頭癌の既往患者が再発時に未分化癌となって発症して来院する場合も時にある。

       それぞれの癌には、特有な臨床経過を示す場合が多い。乳頭状癌は局所リンパ節転移が多く発生するが、遠隔転移は比較的少ない。その予後は癌という診断名には不釣り合いなほど、経過の長いものが多い。濾胞癌では、血行転移が乳頭癌に比べて多い特長がある。髄様癌は家族内に発生(常染色体優性遺伝)する場合が多く、典型例では副腎褐色細胞腫や原発性上皮小体機能亢進症を合併している。未分化癌は現代医学では未解決の癌で、根治が期待できない病態である、進行度も極めて早い。悪性リンパ腫は非上皮性悪性腫瘍であり、専門的には“がん“ではなく、全身のリンパ節が系統的に悪性化した病態の一部が甲状腺内に発症したものと判断される。たまたま、甲状腺内にだけ発症している場合と考えられ、全身の化学療法を必要とする場合が多く、血液内科にて加療が行われる場合が多い。時に甲状腺内だけに限局し、手術だけで治癒に至る症例もある。

    2. 診断
       臨床症状、触診、画像診断、細胞診、病理組織診断、等から、総合的に判断して付けられる。反回神経麻痺や頸部リンパ節を伴う場合は癌であることの診断が容易であるが、原発である甲状腺に限局した小さい腫瘍の合には確定診断が得れれにくい場合も多々ある。超音波下の細胞診が確定診断には一番信頼性が高いが、腫瘍が小さいほど、技術的な格差が一番生じやすい所でもある。二、三回の細胞診で良性と診断されたものが、手術により、悪性腫瘍と判明する場合もある。
       甲状腺癌に対する特異的な腫瘍マーカーは存在しないが、甲状腺ろ胞細胞で作られるサイログロブリン(TG)の血中濃度が、腫瘍の病態の一部を反映していると考えられている。例えば、甲状腺全摘出後の治療効果判定でTGを追跡し、高値が生じてくる場合には、再発や転移が疑われるのである。ただし、TGは他の甲状腺疾患でも高値を示すことが多く、また穿刺吸引細胞診検査直後のTG値は高値となることが多いので、判定には慎重を要する。
    3. 治療を考えた場合の、甲状腺癌の位置づけ
       甲状腺癌の治療は、施設間によって、その治療に対する考え方に大きな隔たりがあるといえる。その理由は、同じ頭頸部癌でも、扁平上皮癌を有する、舌癌や下咽頭がん、喉頭癌に比べると、予後の点で甲状腺癌はそれらの疾患とは明らかに一線を画しているからである。簡潔に述べるならば、甲状腺癌そのものは、充分に長期生存が期待できる病態であり、かつ、担癌で支障なく生活を送れる場合が多いからである。
       従って、頭頸部癌加療を専門にしている施設では、甲状腺癌だからと言って、対象者全員に一律に手術を勧めているとは限らないのである。宿主の年齢や全身状態と病態の拡がり程度から総合的に判断して、対処方法を決めているのである。一般に、高齢者ほど経過観察に留めている場合が多いと言える。

       甲状腺癌は、若年者にも高齢者にも学童を含めたあらゆる世代に発症する。そして甲状腺癌のうち、一番発生頻度の高いのが乳頭癌であるが、その発育速度が、通常は極めて緩慢という特長を有する。10年単位でその予後を考えても、それほど大過ない病態である場合が多い。従って、治療する立場から考慮する点は、壮年期や若年者に発症した場合には手術摘出を最優先し、高齢者ほど、手術による負担と生命予後等を総合的に判断して加療を決定している。

    4. 甲状腺癌治療がめざすもの
       未分化癌や扁平上皮癌等の特殊な甲状腺癌を除いた、一般に遭遇する甲状腺癌では、予後が良好なため、根治性を求められると同時に、手術による後遺障害が僅少になるように努める必要がある。不幸にも肺転移が発症しても10年単位で生存が可能な場合も少なくない。遠隔転移が即生命予後と直結するものではない。甲状腺癌に於いては、局所が進行すると、早晩、気道狭窄や食物の通過障害が発症する。生命予後が良好にも拘わらず、食物の通過障害や気道狭窄が発症すると、それだけ患者に長期間に渡る負担をり強いる結果となってしまう。我々の施設では、肺転移等の遠隔転移が発生していても、甲状腺癌による気道や食道のトラブルが生じている場合には、それらを改善するためだけの手術も積極的に施行している。安心して呼吸が出来、生涯にわたり経口摂取が出来る状態を確保することは、在宅での生活を継続する上からも、そして社会生活を送る上からも重要である。特に経口摂取は人生の最大の喜びであり、癌の根治性を度外視しても、例え音声の一部あるいは全てを消失しても何とか確保したいものと考えている。気管切開の状態や気管切開と経管栄養の両方を抱えながら生涯を送ることは並大抵のことではないからである。

    B)良性新生物

     甲状腺疾患は、その発症病態は多岐にわたっているが、一般的には、腫瘤性病変を本人が自覚したり、或いは検診等で受診した際に、その医療機関から病変を指摘され、専門機関を受診する場合が多い。
     腫瘍が、原発部位の甲状腺内だけに小さく存在しているている場合には、悪性腫瘍との鑑別が難しく、確定診断に至るまでに時間を要することがある。
     腫瘍(新生物)が「良性」であるか、それとも「悪性」であるかの診断は、触診、超音波下の穿刺吸引細胞診、CT,MRI等の画像診断、シンチグラム、等で総合的に判断して評価する。腫瘍が小さい場合にはターゲットとなる部位に穿刺針が当たらなかったり、腫瘍が硬く細胞を吸引できなかったりするため、細胞診断が得られない場合もある。二、三回穿刺吸引細胞診を施行し、良性腫瘍と診断がつけられたにも拘わらず、手術材料による組織診検査で癌と判明する場合もある。腫瘍が1cm以下の場合には微小癌として定義される事が多い。近年の超音波検査の進歩で、従来良性腫瘍と評価されてきたものが微小癌であると判明することが多くなってきた。また、良性との診断の下で手術を施行し、周辺のリンパ節の摘出で、その中に甲状腺癌が認められ、原発には甲状腺癌の存在が認められないケースもある。

     この様に、簡単の様で甲状腺腫瘍が良性であると絶対的に言い切るには、難しい面を含んでいる。ただし、良性腫瘍と評価し、小さい癌であることが気がつかない場合でも、甲状腺癌そのものが発育が緩慢で、大事に至る場合がめったにないのが甲状腺癌の特長でもある。すなわち、癌である診断を付けるよりも、完全に良性である言い切る方が難しいのである。特に良性腫瘍である濾胞線種と濾胞癌の鑑別診断は極めて難しく、細胞診でも確定に至らない場合が多い。
     従って、濾胞線種という良性腫瘍の診断がついている場合には、高齢者には経過観察で充分であるが、若年者には、手術を勧める場合が多い。腫瘍が発生していること事態が不自然なことであり、若年者ほど確定診断を付ける意味があるからである。また、手術を希望されない場合でも、一定期間は経過観察するように努めている。

  3. 非新生物
     甲状腺にいわゆる“しこり”を発生する疾患が多いが、腫瘍でないことも多い。その典型例が“腺腫様甲状腺腫=ademomatous goiter”である。真の甲状腺良性腫瘍は、厳密な上では、“濾胞線種=follicular adenoma”だけであり、しばしば両者の鑑別が問題となる。腺腫様甲状腺腫は過形成病変であり、腫瘍ではない。単発性に発生する場合には特に、“腺腫様結節=adenomatou nodule“ と呼ばれる。両者を厳密に鑑別診断するためには、手術摘出による組織診断が必要である。
     甲状腺癌と同じく、高齢者では経過観察で良いが、若年者ほど、確定診断の必要性・加療の必要性が生じてくる。
聴器がん
  1. はじめに
     聴器は、外耳(耳介、外耳道)、中耳、内耳で構成されています。聴器癌は、主に外耳、中耳より発生し、大部分は、扁平上彼癌からなるが、耳垢腺より発生する腺癌などもみられ、耳介では悪性黒色腫なども認められます。原発部位により、耳介癌、外耳道癌、中耳癌にわけられ、頻度的には耳介癌、外耳道癌、中耳癌の順であります。耳介癌は、外表に露出しているため、皮膚癌として取り扱われます。
     聴器癌全体としても、発生頻度が少なく、一施設での集積症例数が少なく、治療のコンセンサスが確立されていないのが現状であります。
  2. 疫学
     頭頚部悪性腫瘍の、0.5%から1.5%程度である。50から60歳に多く、男性に多く、女性の2倍程度であります。
  3. 誘因
     耳介癌では、粉瘤、湿疹、火傷、凍傷、ケロイド、角化症などから悪性化するものが、報告されています。外耳、中耳癌の原因としては、長期にわたる耳漏が考えられています。
    事実、中耳悪性腫瘍の患者の75%以上に、中耳炎の既往があります。
  4. 症状

    耳介癌

    直接目に見えるところであり、腫瘍そのものを主訴として受診されることが多いようです。

    外耳癌

    早期から耳痛を伴うことが多く、耳漏、痒痒感が長期にわたっている事などもあります。腫瘍が増大すれば、外耳道の閉塞による耳閉感、中耳機能の破壊による難聴、耳出血を生じる。外耳道前壁から、顎関節包に浸潤すると開口障害を、耳下腺への浸潤により、顔面神経麻痺を生じます。

    中耳癌

    深部外耳癌 初期には中耳炎による症状に似ています。中耳炎に比べ出血しやすいのが特徴です。前方進展により顔面神経麻痺や開口障害を生じます。まれではあるが、内耳へ進展することにより、眩暈、混合難聴、耳鳴りなどを呈し、さらに高度進展例では、他の脳神経症状を生じます。

  5. 治療
     他の頭頚部癌治療と同様に、手術 放射線 化学療法を併用した集学的療法が行われています。

    放射線療法

    耳介や外耳道入口部の腫瘍で、早期発見されているケースでは、外科的切除でも放射線でも治癒する可能性が高いです。外耳道深部から中耳の腫瘍では、骨に囲まれているという解剖学的条件から放射線単独による治療は困難なことが多いです。基本的には、術前術後の補助的な役割となります。

    手術

    耳介および外耳道入口部の関しては 安全域をとり、局所的に切除可能なことが多いですが、広範囲の欠損をきたした場合、有茎皮弁や遊離皮弁による再建を必要とすることもあります。骨に浸潤したような癌の場合には、耳下腺、顎関節など周囲組織を切除しなければならないこともあります。外耳道全摘術では、 腫瘍が外耳道に限局し、中耳に進展していない例において適応となります。前壁に浸潤するような症例では、耳下腺下顎関節突起(場合により顔面神経)を合併切除します。耳介入口部を大きく切除した症例などでは、腹直筋皮弁などの皮弁を用いて再建が必要となることがあります。
    さらに広範囲に腫瘍が進展しているケースでは、拡大中耳根治術 側頭骨亜全摘出術など志向されるケースもあります。

  6. 予後
     症例数が少ないため、報告にはばらつきが大きいのが、現況です。一般的に耳介癌 外耳道入口部癌は限局している限り、皮膚癌に準じてその予後は良いです。中耳癌については、予後は不良なことが多いです。
頸部腫瘤

 臨床的にしばしば遭遇する病態である。背景は、新生物(良性・悪性腫瘍)、炎症性変化、非炎症性腫大、先天性奇形、等、多岐にわたる。

新生物の場合

  1. 悪性の場合
     これは大きく、二通りに分けられる。頭頸部領域に原発を有する悪性腫瘍に頸部リンパ節転移が発症した場合と、頭頸部以外に原発部位を有し、頸部領域に遠隔転移として、発症した場合である。例えば肺癌や胃癌、或いは大腸癌の鎖骨上リンパ節転移などである。
     しばしば臨床で苦労するのは、頸部に発症したリンパ節転移の原発部位がわからない場合である。特に扁平上皮癌野庭は、頭頸部に後発するため、頭頸部領域のどこかしらに原発部位が存在することを前提に精査をするのであるが、PET,CT, MRI, 腫瘍シンチ等の検査を試行しても原発部位が判明しないことがある。原発の大きさが2~3ミリ程度で頚部リンパ節転移が数センチ以上に及ぶ場合も少なくない。尽きるところ、原発が小さいために判明できないのか、粘膜に隠れて同定できないかのどちらかで有ろうと推察されるのです。一定期間観察を継続しても原発が判明しない場合は原発不明頸部癌として統計上処理されるが、すっきりしない病名である。潜在性原発部位として、扁桃、上咽頭、下咽頭など疑われ、精査を行うことが多く、無作為の生検摘出により原発部位であることが判明することもある。
     頭頸部癌の治療では、頸部にリンパ節転移部位を認める場合には、原発部位と加療と同時に頚部リンパ節転移の加療もほぼ同時に行うのであるが、原発が判明しない場合には、頚部リンパ節転移の加療を優先せざるを得ないことになる。臨床的の経験では、原発部位が遅れて認められる疾患ほど、生物学的膨張率が低く、生存期間が長い場合が多い。
     内頸静脈に沿って発症した単発性の扁平上皮癌組織を有する頚部腫瘤は、原発の判明がつかないときは、先天異常である側頸嚢胞が癌化したものとして、対処する場合がある。
     加療の原則は、まず、頸部腫瘤の病理情報(細胞診、或いは生検)を調べ、扁平上皮癌であれば、頸部郭清術を原則とする。その場合に、放射線や抗癌剤を併用して行うこともある。
  2. 良性の場合
    側頸囊胞、正中頚囊胞、脂肪腫、血管腫、筋腫、骨腫、食道憩室、等、多数認められる。確定診断は生検で確定する。顎下部や耳下部では唾液腺腫瘍の発症が認められる場合も多い。

炎症変化の場合

この場合も背景は多紀に及ぶ。近年しばしば遭遇するのは、一般的には撲滅したと考えられている結核菌によるリンパ節腫大である。熱発を伴うことが多い。その他、炎症性リンパ節炎、サルコイドーシス、頸部蜂窩織炎、壊疽、等が発症し、確定診断は生検で行う。

その他

 頻度が低いが、頭頸部領域には非上皮性悪性腫瘍も発生する。一般の方にはお解りにくいと思うが、悪性腫瘍には上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍とに分けられる。臓器の粘膜面や、分泌腺、等は、は組織を構成している表層(錠皮部分)に相当し、そこから発生した腫瘍は“がん”と呼ばれる。胃癌や大腸癌、口頭が、舌癌、等である。一方臓器や組織には構造体の内部にも悪性腫瘍が発症する。上皮の下層には、筋肉や脂肪、或いは血液、リンパ腺、骨等が存在する。それらの組織にも発生した悪性腫瘍は、は非上皮性悪性腫瘍(肉腫)と呼ばれる。例えば、横紋筋から発症すると横紋筋肉腫、骨から発症すると骨肉腫、脂肪から発症すると脂肪肉腫、リンパ節から発症する悪死リンパ腫、血液から発症する白血病、等である。

 頭頸部外科領域にも、この非上皮性組織が存在し、それに由来する悪性腫瘍(肉腫)が、頻度が低いが発症する。例えば、下顎骨から発症する下顎骨肉腫、舌の筋肉から発症する横紋筋肉腫、咽頭に発症する脂肪肉腫、平滑筋肉腫、等である。

 治療は化学療法、手術、放射線治療、等を組み合わせた総合的な治療が行われる。特に化学療法は、第一選択として行われることが多い。若年者にも多く発生し、時に治療に難渋することがある。抗癌剤は眼位対する場合よりも副作用が大きく、化学療法部の医師と相談しながら抗癌剤の組合せや投与量を検討せざるを得ない場合が少なくない。

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