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病理診断科

ごあいさつ

 近代病理学の父と言われるルドルフ・ウイルヒョウにより、全ての疾病の基本は人体の最小単位である細胞の傷害による、という説が19世紀に提唱されて久しいのですが、日本では、「病理」という学問分野の内容はあまり知られていません。病理学は、以前は基礎系の学問でしたが、近年では次第に病院における医療に具体的に関わるようになりました。ここでは病院に於ける病理診断科についてお話をさせて頂きます。
 病理部門は以前から比較的大きな病院には存在していましたが、日本では長い間、医療関係者以外にはほとんど知られていませんでした。知られるようになった具体的な契機は、平成20年に厚生労働省が病理診断科を標榜科として認可し、内科、外科等と同様の診療科として確立されたことが大きいと考えられています。患者さんが受診しない科を厚生労働省は標榜科として認めなかったわけですが、医療の質の向上に伴い、病理診断が医療において重要な位置を占めていることが次第に認識されたことが誘因と考えられます。認可されたことにより、病理医が勤務している病院では、病理診断科という看板を他の科と共に表示し、一般の人たちの目に触れるようになりました。
 病理診断科は組織・細胞検体を通じて、臨床各科の医師からの依頼事項・相談を受ける役割がほとんどです。具体的には、各診療科で採取された病変の一部が病理診断科へ提出され、顕微鏡標本が作製され、私たち病理医が病理診断を下し、診療担当医に報告します。病理医が患者さんと直接お会いしてお話をすることはほとんどありませんが、患者さんの体の一部の組織や細胞の診断を通じ、主治医グループの一員として多くの患者さんの診療に携わっています。病理診断科は「検査」ではなく「診断」という医行為を行い、高度医療における大きな役割を担っています。病理診断は最終診断になる場合が多く、特に腫瘍の医療においては必須です。病理医は診断の決定だけでなく、組織型により治療方法が異なる疾患の治療法決定にも関与しています。医療の質の向上に伴い、検体数は年々増加し、責任の重さも同様です。
 治療が行われたにも拘わらず、不幸なことに、患者さんが病死される場合があります。その際にご家族の同意が得られた場合、病理解剖が行われます。病理解剖では、臨床的に不明な点を明らかにすると共に,生前に施行された医療に関する評価を行い、臨床医と病理医とのカンファランスを通じて病理解剖から得られる医療情報を提供し、医療の質の向上と維持、医療の精度管理や医師の卒前・卒後教育に寄与しています。
 他の診療科と異なり、病理診断科を患者さんが直接受診することはほとんどありませんが、最近は病理外来を掲げる病院も出てきています。患者さんからの要望に応えるため、病理専門外来を開設している病院や、病理解剖が施行された患者さんのご家族が病理解剖の結果説明を病理医から直接受けることができる病院もあります。このような取り組みもなされるようになり、今後は病理診断科の理解が高まり、医療の質の向上が一般の方々にも認知されることが期待されています。

病理診断科 科長 杉谷雅彦

特色

「病理専門医が診断」

経験豊かな5名の病理専門医が診断していますが、更にミスを防ぐために二重チェックを実施しています。稀少・難解症例の場合は、その領域を専門とする他施設の病理医に第三者意見をお願いし、誤りのない正確な診断を提供しています。

「症例数が多い」

年間症例数は組織診で約9,500、細胞診で約17,000。県下でも有数の症例数です。

「各科とのネットワーク」

検体はほぼ全ての臨床科から提出されます。各科との連絡をつねに密にし、診断書から理解される事柄に誤解がないように、主治医グループの一員として診断に当たっています。また、当院では2017年6月よりすべての病理診断報告書の担当医による確認・未確認を電子カルテ上で毎月検索し、未確認症例が存在した場合は各科に症例を伝達しています。病理診断の未確認をなくすシステムを確立し、適切な医療の施行をサポートしています。当院の未確認割合(率)は非常に低い値です。

教育・研修・研究

「教育・研修」

研修プログラムを準備し、研修医の病理研修を引き受けています。臨床に即した病理診断の基本的事項の教育、および各研修医の希望に合わせた各臨床科の特徴的な症例を中心に研修指導を行っています。

「学会報告・研究」

当科における組織診・細胞診をもとにして、症例検討会や学会等での症例報告、および医学雑誌への投稿を行っています。臨床医の症例報告の場合は判りやすく鮮明な画像を提供し、研究では学術的なサポートをしています。

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