ロボット支援心房中隔欠損症手術
心房中隔欠損症とは

心臓は右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋からなります。
右心房と左心房は心房中隔という壁で、右心室と左心室は心室中隔という壁で隔たれています。もともと母体内にいるあいだの胎児の心房中隔には穴が開いています。その後胎児の成長に伴い、穴が小さくなり、出生後数日で穴は完全に閉じます。しかし、心房中隔がふさがらずに先天的に穴(欠損孔といいます)が存在しているのが心房中隔欠損症です。
心房中隔欠損症では、右心房と左心房の間に欠損孔があるため、右心房内の血液と左心房内の血液が穴を介して自由に行き来してしまいます。したがって、右心房には全身から戻ってきた血液と左心房からの逆流血が流れ込み、右心室の負担が増えます。
また、肺への血流が増加し、肺うっ血や肺高血圧を引き起こします。逆に、左心室に流れ込むはずの血液の一部は左心房から右心房に流れ込んでしまうため、左心室に流入する血液が減ります。
胸部X 線写真、心電図、心エコー、心カテーテル検査などにより、肺血流量が全身血流量より多く流れている場合、手術の適応となります。(通常、肺血流量と全身血流量は同じ比率です)

ダビンチ・システムを用いた心臓の手術

手術支援ロボットであるダビンチ・システムを用いた心臓手術は、高精度の3Dハイビジョンによる術野再現のもと、これまで低侵襲心臓手術で困難であった術中の病変細部の観察できるようになりました。
また、手元で360度回転可能な鉗子を用いて外科手技が可能なため、解剖学的な制限から処置に高度技術を必要としていた手技が容易となりより正確な治療が可能となっています。欧米ではすでに、心臓手術、特に右心房、左心房内の弁膜症や先天性心臓疾患に対して用いられ、良好な成績が報告されています。
日本でもようやく薬事承認を得て、冠動脈バイパス術の際に用いる内胸動脈剥離および心房中隔欠損症と僧帽弁手術ができるようになりました。

ただし、その使用には「ロボット心臓手術関連学会協議会」による 厳密な施設基準があり、一定数の通常手術や低侵襲手術の経験や、医師のみならず看護師や技師を含めた手術チーム全員のトレーニングが義務づけられています。当院ではすでに、ダビンチ・システムを製作する米国intuitive surgical社のトレーニングを全員が受けており、ロボット心臓手術関連学会協議会により施設認定を2016年7月に日本で2番目に受けています。
実施後の経過と改善の見込み・予後
ダビンチ・システムを用いて手術を行うことにより、従来の手術方法に比べ、より繊細で正確な病変部の吻合・縫合ができること、より小さな傷口で治療を行えること、またそれにより低侵襲な手術を行えることで、痛みが少ないこと、感染リスクが小さいこと、傷あとも少ないこと、そして回復期間や入院期間が短いことが期待されます。
ロボット手術による医療行為の危険性
ダビンチ・システムを用いた手術は、外科医の動作を伝えるアームにおける“触覚”が乏しいため、患者さんの胸腔内や心臓組織を損傷する恐れがあります。
結紮や縫合の一部の手技は患者さんの近くにいるスタンドバイ外科医と連携して進めます。そのために、通常の手術よりも時間がかかる場合もあります。
ロボットによる手技が困難な場合は、通常の内視鏡手術や開胸手術に移行する場合もあります。
しかし通常の僧帽弁などの手術において予想される心臓手術における合併症が発生する危険は従来手術とほぼ同様です。
今後の展望
まだ健康保険の適用でないため自費診療になります(費用は病状により変わります。また、合併症等により、弁形成術が必要な場合には保険適用となることがあります)。金額は個別に相談に応じていますので、お気軽にご相談ください。
ただ、MICS(小切開心臓手術)よりもさらに小さな傷で痛みも軽減できるため、低侵襲手術の1つとしてこれから需要は増えてゆくと期待しています。
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